精神疾患&大学中退を飛び越えた既卒男子Vol.4|デイケア後編

精神疾患&大学中退を飛び越えた既卒男子Vol.4|デイケア後編

デイケアの1週間

デイケア前編の続きを話していきたいと思う。今回はデイケアの1週間にフォーカスしてお話しする。以下がデイケアプログラム(1週間)である。各プログラムを代表して「SST」「クッキング」「スポーツ」の3つのプログラムを詳しく紹介することにする。

【月曜】
午前 : SST(社会技能トレーニング)
午後 : DCS・パソコン

【火曜】
午前 : ヨガ・自立支援セミナー
午後 : 集中力養成講座 or ASAP

【木曜】
午前 : クッキング
午後 : アート or ジョブガイダンス

【金曜】
午前 : スポーツ
午後 : グループアクティビティ

※月曜午後と火曜午前は隔週

わからないと思うので、簡単に解説

  • DCS・パソコン : 基本隔週。DCSは要するにゲーム。ボードゲームかテレビゲームで遊ぶ。パソコンは参考書のコピーを使用してのエクセルの演習。スタッフさんが講師代わり(以前は専任の講師の方だったらしいが節約されたらしい)。進む人はマクロまでいくらしい。
  • ヨガ・自立支援セミナー : 隔週。ヨガは専任の講師の方がいらっしゃる。ナマステ。自立支援セミナーは社会復帰のために外部の人の話を聞いたりする。
  • 集中力養成講座 : お勉強の時間。最初に百マス計算をやり、各自読書やお勉強。最後にみんなでクイズをやる。
    アート : 外部の講師の方がいらっしゃってうちわ作りや石鹸細工づくりなど。
  • グループアクティビティ : Aセンターを出て外で活動。釣堀で釣りや映画鑑賞、カラオケなど。午前中までに来れば無料で参加できるのがミソ。

SST

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SSTというのは、社会技能トレーニング(Social Slill Training)のことである。名前は聞いたことはあったが、実際に何をするのか全く想像がつかなかった。一言でいうと、社会生活において困った場面を切り取って、「そこで困らないようにするためにはどのようにすればよいか」主に会話という観点から考えていこうというものである。筆者としてはプログラムとしてはこのSSTが一番得るところが多かったと思っている。

SSTは基礎的な活動を行うグループそれの応用である困りごとグループに分かれる。筆者は後者であった。担当は恐らく心理学が専門だと思われる外部講師の女性の方、スタッフの女性の方である。多目的室で机を移動し椅子で輪になったあと最初はちょっとしたゲームで体を動かす。これはSSTが月曜日の午前中という眠い時間に設定されているため、眠気覚ましを兼ねているそうである。

その後、良い会話の仕方、SSTの決まりごとを皆で復唱する。ここで言われるのは、例えば会話をする時は相手の目を見るであるとか、身振り手振りをしっかりするであるとか、そういうことであるが、それはケースバイケースでやり過ぎてはいけないということが言われる。実際に筆者は声が大きかったり身振り手振りが大きい癖があったりするのだが、どの程度が一番最適なのか、バランスが取れているのかというのは一般の人でも難しいであろうと思う。

その後、毎週設定するチャレンジカード(プログラムの最後に来週までにチャンレジしたい課題を個人個人がそれぞれ設定する)の課題をこなせたか、こなせた場合はどういう状況でどのように対応をしたかを発表する。

ここからが本題で、だいたい二人(多い場合は三人)が実際に皆の前に出て主にチャレンジカードで出した状況を再現し(いわゆるロールプレイング)、その場にいる皆でより適切な対応を考えるというものである。再現される状況は本当に様々なものであったが、特に多いのが断り方というものであった。断る、ということに関して個人的にはあまり苦手であるという印象はなかったのであるが、自分もロールプレイングの対象となってやっているうちにどうも断り方が良くない、ということがわかってきた。

断り方に限らず、言い回しに気を付ける、表情をあからさまにしないといったようなのが最大公約数的ではあるとは思うのだが、状況によって適切でない場合もあるし、相手がどのような立場の人であるか、その場の設定されている状況などにも大いに左右されるものである。結局のところ正解はなく、その場でいかに臨機応変な対応をとることができるか、ということにはなるのだが、それが難しいのは言うまでもない。

ロールプレイングは20分ほど行われ、対象者には拍手が送られる。最後は各々が来週までにこなしてきたい課題を設定、発表し、自分のチャレンジカードに書きとめて終わりとなる。

クッキング

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料理をするというのは、色々な能力を活用しなくてはならないらしい。つくる料理を決める、食材を買ってくる、段取りよく料理をする、後片付けをする。人間食べなくては生きてはいけないということを考えると、社会復帰を要請されている人々にとって、うってつけのプログラムといえるのではないだろうか。

このクッキングは週ごとにやる内容が変わっていて、第一週は第三週以降の料理を決定、第二週は実際に近所のスーパーに食材を見に行き価格調べ、第一週と第二週はそれに軽い料理を行う。第三週以降は実際に1時間半近くかけて本格的に料理を行う。正直おやつ程度の簡単な料理を予想していた筆者にとっては、時間と手間をかけてきっちりと料理を行うことは予想外であった。

料理の決定は積んであるオレンジページから候補を出し多数決で決める。価格調べは実際に必要な材料とその分量を書き出し、メンバーはグループに分かれて実際に最寄り駅近くにある安めのスーパーに行く。そして実際に購入するものを決め電卓片手にいくらいくらと計算する。スタッフの方々曰く、本来であれば実際に買い物をするところまで行いたいらしいが、食材の期限のことを考えて前日にスタッフの方々が購入しているとのことである。

クッキングの担当はデイケアの女性と男性のスタッフの方一人ずつ。朝の会に来たメンバーはプログラム開始までに二つか三つの班に分けられる。デイケアの施設にはコンロまで備えついている本格的な料理室というのがある。とはいってもそこまで広くないので、3グループに分かれる場合には近くの多目的室も使用しながら芋洗いの状態で調理を進める。

調理自体はオーソドックスであって、材料を班に分た後はレシピに従ってひたすら料理をつくるという感じである。途中で休憩を挟むが、あとは1時間近く料理に専念する。料理が出来上がれば、料理室の奥にある畳の部屋に上がって机を囲んで、いただきますをして食べる。食後はそれぞれ料理をしたこと、また料理そのものに対しての感想を述べる。そして最後は全員で分担して皿洗いをする。

料理をやっていて感じるのは、以外にも段取りが良くないというか、段取りの取り方(というほど大げさではないと思っていたのだが)そのものがわかっていない人も結構いたということである。段取りの取り方というのは全体を俯瞰するマクロな見方だけではなく、順番を決めるために細かい作業についても知っていなくてはならず、料理に慣れていない人にとっては難しいものなのかなと感じた。

ただ、プログラムとしての料理という意味でいうと、共同で作業をするという目的を考えると一考の余地はありそうな気がする。というのも、実質の段取りは価格調べにしても料理そのものにしても皿洗いにしても、慣れている人がやってしまうため、慣れない人にとっては慣れないままで終わってしまっている可能性も否定できない。

そこはスタッフの方が最初の班分けで(プログラムが円滑に進め何事もなく終わらせるというのもスタッフの方々としては大きな目標であろう)わざとそういう仕組みをしているというところはあるのだろうが。ただ一人暮らしをしていても本格的な料理というのもの嗜んでいなかった筆者としては、大いに勉強になったことは確かである(中学高校の頃の家庭科と雰囲気がだいぶ違うのは年齢層が高いことと目的意識の有無によるものであろうか)。

スポーツ

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運動音痴ながら体を動かすことが大好きな筆者にとっては、非常に楽しみだったプログラム。担当は外部の講師の方とデイケアのスタッフから女性の方が2名。場所は体育館である。この体育館というのは驚きで、最初はどこでやるのだろうと思っていたが病院の付属施設という性格もあってか、バスケットコートが2面取れるだけの立派な体育館が常設されているのである。なお筆者は機会がなかったが、テニスの時だけは外でやることもあるらしい。競技は男女混合で行われることから比較的誰でもできるスポーツが選択される。卓球、バドミントン、ソフトバレー、珍しいところではインディアカソフトテニスなどというのもあった。

皆、思い思いに運動できる格好に着替えて、最初は体育館を歩いて2週、そして軽く走りながら3週する。その後、散らばって講師の方に従って準備運動。それからその日やる各競技の準備に入る。スポーツは団体競技であるから、こういう準備から役割分担をしていくというのが勉強の一つになるのだろう。

準備をし終えたあと、基本はペアになって協議するため男女別にじゃんけんをしてペアを組む。ソフトバレーだけは大きい一面を取って試合をするので2チームに分かれる。そして別れたらあとはスタッフの方が試合を組んで粛々と行っていくという感じである。組み合わせ全部がやれるわけではないが、2回ほどの休憩を挟んだあと、その競技の優勝者に拍手が送られ軽くアフターとして準備運動をして終わりとなる。

こう書いていると、結構淡々と進んでいる感じであるし、実際思っていたよりも和気藹々と楽しくやれるものであった。一つ思ったのはいかなる競技においても試合を円滑に進ませていくためにはある程度の条件が必要であるということである。スポーツというのはルールのある遊びである。逆に言うと、ルールのないスポーツはない。競技者がルールを知っていなければいけない。ルールの積み重ねでつくられているのは社会生活も一緒であり、ルールを把握する、そしてそれを遵守していくということ自体が社会で活動することの縮図ともいえよう。

そういう意味ではなかなか説明してもルールをすぐに飲み込めない人たちがいるのも事実で(もっとも日常の社会生活でもそんなこと多々あるが)スポーツをしているというよりもルール解説がメインになってしまうようなこともあった。ただそこらへんもわかろうとして飲み込みが遅いのと、最初からやる気がないとのは雲泥の差で個人的にはわからなくていいからやる気を見せてほしいと思ったこともあった。運動をすることは動物の性であるから結構素が出るのかも知れない、などと思った次第である。

デイケアも終わって

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当初の目的は、割り切った生活リズムの矯正であるという捉え方しかしていなかったデイケアであったが、小さいながらも人間社会が営まれている場でもあり、筆者自身も大きく変わったと思う。特に性格が穏やかになったと言われたことで、例えばこんなことがあった。

8月の下旬に大学のサークルの飲み会があり、そこで数ヶ月振りにあった学年が下の女の子に「表情が穏やかになりましたねぇ」と言われたのである。こんなことを言われたのは、生涯でも始めてで、筆者としては非常に嬉しかった。それ程に変わったとは思っていなかったからである。

表情に出ると言うことは、内面も変わったということであり、実際に言われたのは他人に対して物事をはっきり言わなくなったということ他人の話を聞くようになったということである。両方とも一般的な社会生活を送っている中で薄々感じていたことであったし、自分で自覚していた部分ではあった。ただ、自分を改善していくというデイケアの場において、その癖をよく自覚することができたように感じる。それに、周りの人の助けを借りることで、その癖を少しは治すことができたのかな、と思っている。

そして何よりも、結果として筆者の何かが変わったという事実も大切なことではあるが、頑固な性格だと思っていた自分自身がこの歳になっても変わる、変えられることがわかったのが、何よりの収穫ではないだろうか。

結局、大きく休むこともなく、9月末までデイケアに通うことができた。9月の上旬に一回面倒くさくなったのだがスタッフの方に相談してそういうものだと乗り切った(たぶん数ヶ月が経って、デイケアに対しての物珍しさがなくなったのはあると思う)。最後の面接で担当の方が、正直T大の人ということで、このプログラムに馴染めるかどうか不安だったと仰っていたが、筆者としては非常に楽しかったし、良い仲間や良いスタッフの方々にめぐり合えて良い機会を頂いたと本当に感謝している。この場をお借りしてデイケアのスタッフの方々とメンバーの方々に御礼申し上げたい。

以上が、デイケア編になります。その後の社会復帰に向けたミスターMのストーリーは次回まで少々お待ち下さい。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

UZUZ Writer
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